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Johnosn & Johnson(JNJ)銘柄分析 -売上編-

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今回はJohnson & Johnson(JNJ)の売上状況について詳しく見ていきます。

 JNJの概要については下記記事で宜しければ纏めておりますのでご参照ください。

tonryman.hatenablog.com

 

 

JNJ会社概要

ジョンソン&ジョンソンは、医療・ヘルスケア製品を提供する米国の持株会社。事業部門は、消費者関連、医薬品、医療機器・診断で構成。目薬、鎮痛剤、胃腸薬などの一般用医薬品や栄養補助食品、抗感染、精神疾患、心循環器などの治療薬を製造、販売する。また、病院で使用される外科手術製品・臨床検査機器・診断薬を扱う。本社はニュージャージー州。(Yahoo!ファイナンス

この説明からも多岐にわたる事業を展開しているのがわかると思います。

医療分野の製品は専門性が高く、1企業1領域のニッチ商売をしている企業が多いですので大きな特徴です。医薬品と医療機器の両方をトップクラスに大きな規模で展開している唯一の企業とも言えます。


JNJの各事業

JNJの事業は大きく下の3事業に分けられます。

  1. 一般のお客様向け製品(コンシュマー)
  2. 医療機器
  3. 医療用医薬品

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バンドエイドやリステリンなどのドラッグストアで見かけるBtoC製品のイメージが強いかもしれませんが、JNJの主力事業は医療機関で使用される医療機器と医療用医薬品です。2019年には医療機器と医薬品の売り上げが全体の83%を占めています。

 

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・医療機器事業の中で多くの売り上げを占めるのが主に消化器領域などを主とする手術機器と整形外科領域の機器です。2019年はこれらで7割程度を占めています。

 

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・医薬品事業の中で多くの売り上げを占めるのは免疫領域とがん領域です。これらで6割程度を占めています。

 

Point!

医薬品、医療機器、コンシュマーと3つの事業からなり、それぞれの中でも領域が分散されています

 

各事業の売り上げ推移

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コンシュマー事業はこの10年間ほぼ横ばいで推移しています。医薬品は右肩上がりで増加している一方、医療機器は2013年を頂点にして伸びていません。その後は医薬品との差は広がる一方で2019年には医薬品の6割程度の規模となっています。

医薬品の売り上げが50%を超える今となってはJNJは医薬品メーカーの色が強いですが、3事業部に分散された総合ヘルスケア企業ということができるでしょう。

 

医薬品部門の領域別推移

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この10年間で自己免疫疾患領域とがん領域が伸長しておりJNJの売上拡大を支えていることがわかります。市場が大きな2領域に照準を合わせて戦略的に拡大してきたと言えると思います。

一方で2017年にスイスのアクテリオン社を買収し、肺高血圧領域のラインナップを加えています。一部のがん領域や自己免疫疾患などは医薬品による治療満足度はある程度高まっており市場成長が緩やかになるのに加え、特許切れや市場の激化などを受けていますので、この買収は新たな成長領域を求めた結果だと受け取れます。

www.yakuji.co.jp

一般的に医薬品は特許切れや臨床試験の結果により売上が大きく左右されるので安定して成長し続けるのは難しいと言われます。一方でJNJの成長は安定しておりM&Aも含めた事業戦略が優れていることが分かります。

医薬品は競合による開発競争が激しく、時間制限のある特許ビジネスです。そのため環境変化で急変するリスクが高いため、ポートフォリオを効果的に拡充できれば安定することが期待できます。

過去10年間にめざましい成長を遂げた自己免疫疾患領域とがん領域の製品を見てみましょう。

自己免疫疾患領域の医薬品売上推移

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自己免疫疾患とは、本来は体を守るために備わっている防御機能が破たんし敵ではなく自分の体を攻撃してしまうことによって起きます。疾患は多岐にわたり、関節に異常をきたす間接リウマチや皮膚に異常をきたす乾癬、潰瘍性大腸炎クローン病などがあります。2000年以降はバイオ医薬の開発競争が高まっており、直近における世界の医薬品市場では下記REMICADE®を含め上位に自己免疫疾患の治療薬が多く並びます。

JNJの主な製品にはREMICADE®STERALA®などがあります。

 

REMICADE®

1998年にFDA承認を受けた自己免疫疾患の薬で関節リウマチやクローン病、乾癬などに適応があります。作用機序は自己免疫疾患の原因であるTNF-αという物質の作用を抑える作用です。

REMICADE®は過去60億ドル以上の売り上げがありましたが2015年に特許が切れ、同じTNFαをターゲットにしたHUMIRA®AbbVie,2002年承認)の台頭もあり2019年には40億ドル台に落ち込んでいます。ただしバイオ医薬品は特許が切れてもバイオシミラーと呼ばれる後発品の開発は難しくコストもかかるので急激には減少していません。

HUMIRA®の大幅な成長の要因は、REMICADE®はマウス由来成分を含んでおり点滴投与なのに対しHUMIRA®はヒト由来成分しかしておらず注射投与という違いがあります。アレルギーのリスクが少なく、投与において患者負担が少ないのがベネフィットとなります

REMICADE®など抗TNF-α抗体の効果は高く、例えばクローン病ではそれまでは何度も開腹手術をしないといけませんでしたがこの薬により多くの場合で手術が必要なくなりました。患者のQOLの向上は疑う余地はなく、それまでの常識を大きく覆した社会的意義の高い製品と言えます。

REMICADE®の減少をカバーするようにSTERALA®の売り上げが60億ドルを超えており領域全体的には成長しています。

STERALA®

2009年位承認を受け、クローン病、乾癬、潰瘍性大腸炎に適用があります。

作用機序はREMICADE®HUMIRA®とは異なり炎症反応をつかさどるIL-1223を標的としています。上記の抗TNF-α抗体とは機序が異なるためHUMIRA®とは差別化でき、REMICADE®とは共食いせずに売り上げを伸ばしています。 

がん領域の医薬品売上推移

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主なシリーズにZYTIGA®IMBRUVICA®DARZALEX®があります。

ZYTIGA®前立腺癌、IMBRUVICA®は慢性リンパ性白血病および小リンパ球性リンパ腫、DARZALEX®は多発性骨髄腫に適応があります。

これらの3薬が安定的に伸びてきており、各製品は年間30億ドル程度の売り上げがあります。

Point!

医薬品事業においては1000億円を超える売り上げを持つ製品が多くあります。少数の製品に多くの売り上げ割合を依存しているわけではなく、分散されており次の主力製品も順調に育ってきているので磐石と言えると思います。

医療機器の売上推移

医療機器事業の売り上げ推移を以下に示します。

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全体的に2013年~2017年にかけて売り上げが横ばいに推移しているのがわかります。

2010年代のJNJ医療機器ビジネスは過渡期とも言え、検査機器を扱うOrtho-Clinical Diagnostics2014年に、血糖値測定器を扱うLifeScan2018年に、滅菌機器を扱うASP2019年に売却し、一方で2011年に人工関節を扱い高収益企業のSynthesを、2017年にABTから眼科手術ラインアップを取得して一般人にも馴染みの深いコンタクトレンズブランドのAcuvieなどを持つ眼科領域の拡充を図っています。

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医療機器事業の売上げ自体はあまり振るわないように見えますが、積極的な事業売却により不採算事業の整理を行い、反対に事業取得により高収益化や既存事業とのシナジー効果を実現しています。

後ほど触れまますが手術支援ロボットを始め医療機器事業にも十分な研究開発費を注いでいますので今後の医療機器事業の成長には期待したいです。

医療機器の領域別売上

今でこそ医薬品事業の方が売り上げが大きいですがJNJの起源は医療機器事業にあります。

その長い歴史の中でJNJの医療機器事業は革新的な発想や製品によって医療にとって大きな変革を数多く実現してきました。

無菌手術、冠動脈閉塞の経皮的治療、エナジーバイスや低侵襲手術のための腹腔鏡手術機器、心房細動の経皮的治療など枚挙にいとまはありません。

自社開発にこだわらずM&Aによって大きく成長し不採算事業は切り捨ててきたJNJにおいても、おそらく手術機器事業は神聖領域として手放すことはないのではないでしょうか。

現在の医療機器事業は大きく手術機器Surgery)、整形外科Orthopaedics)、眼科Vison Care)、インターベンションIntervention Care)の4つに分けられています。

カンパニー名でいうとEthiconDePuy SynthesBiosense WebsterCerenovusなどがあります。

ラインナップを見ると医療機器の中でも特に病変部の摘出や再建を行う治療機器を厚く扱っているのがJNJの特徴です。

手術機器(Surgery

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SurgeryAdvancedGenerallySpeciality3グループで構成されます。

Advancedでは通常の手術や低侵襲手術で使用するようなエンドカッターやエネルギーデバイスなどGenerallyに比べると高機能な機器を扱っています。従来は医師が糸針やメスなどを使用して時間をかけて行っていた切除や再建などの手技を、トリガーを一つ引けば完了できるような時短的または低侵襲的なデバイスを取り揃えます。

GenerallyではJNJの起源とも言える手術用の縫合糸や創傷閉鎖剤など一般的な手術器具を主に扱います。

Specialityでは美容関連の機器や2018年までは滅菌用の機器を扱っていました。

整形外科(Orthopaedics

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主に骨折治療材料や人工関節、ヘルニアの治療などに使用する脊椎脊髄固定用のインプラント機器などを扱っています。

インターベンション(Intervention

この領域では体を大きく開けず、カテーテルによる治療を行う製品を扱います。

不整脈治療関連機器を扱うBiosense Webster脳梗塞など脳血管疾患の治療機器を扱うCerenovusがあります。これらは主に足の付け根の血管から細い管を挿入して病変部の治療を行います。

 

Point!

医療機器事業はこの10年間で事業が整理されてきました。事業売却によって売上高自体は緩やかな推移となっていますが、研究開発もしっかり行っていますのでさらなる高収益化への準備期間と捉えることができると思います。

まとめ

 今回はJNJの売り上げについてすこい詳しく見てみました。

今後はそれぞれの事業や領域の競合などについてまとめていければと思います。

最後までお付き合いありがとうございました。

 

 

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