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医療機器セクターのイノベーション:ロボット手術①概要と今後の展望

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今回はあまり知られていない医療機器領域における破壊的なイノベーションを紹介するという企画でまとめてみました。

バイオ医薬品、ワクチン開発、ゲノム解析などの注目度の高い医薬品業界がある一方で、医療機器領域は地味といっても過言ではないと思います。

でものその中にもキラリとひかる企業やイノベーションが確かにありますし、訴訟リスクの高い医薬品企業に比べその影響度が低いとも言われる医療機器業界は過去のリターンを見てみても十分な投資対象になると思います。

何よりも10年間以上医療機器業界に身を置いてきた自分としてもぜひ注目して欲しい企業や技術が多くありますので、今後定期的に紹介していければと思います。

 

今日はロボット手術について紹介していきます。

ロボット手術に関しては以前にも記事を書きましたがそれを補うような内容も含めてありますのでぜひ読んでいただければと思います。

 

ロボット手術とは?

最近国産ロボットの承認がニュースになり目にされた方も多いと思います。

xtech.nikkei.com

ロボット手術とは、その名の通りロボットを駆使して行う手術のことを指します。

ただしロボット手術と言うとロボットが手術して人間は何もやらないと思われるかもしれませんが、まだそこまでは行きついていません。

現在主流のロボット手術ではあくまでも操作や手術自体は人の手や判断によって行われます。

今のところロボットはあくまでも外科医の補助機器であり、人間によって動かされる道具といったような位置付けにしか過ぎません。

現在日本でも多くの外科的手術に適用がついており、拡大し続けています。

保険収載:da Vinciについて | 日本ロボット外科学会 J-robo -Japan Robotic Surgery Society-

 

いろいろな見方がありますが、ロボット手術の先駆けでもあるIntuitive社のDa Vinciを中心に見ると、ロボット手術の大きな特徴は以下二つになると思います。

 

①低侵襲である

 大きな開腹や開胸が必要なく、細くて小さなロボットアームを通すポートを数カ所開けるだけで済みます。美容性が高く、また身体への侵襲度が低い方法です。

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通常の切開方法による手術の痕(東邦大学医療センター大橋病院HPより)

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ロボット手術の痕(ニューハートワタナベ国際病院HPより)


 

②遠隔操作

 下の写真にもありますが術者とロボットが離れています。患者の目の前に術者がいなくても良いというのがロボット手術の大きな特徴です。

 

 

1点目の低侵襲性について解説します。

医療では医薬品などの保存的療法によっては解決できない病変に対して外科的に介入して手術を行うことがあります。

医学は古代より形を変えて存在はしていましたが科学的な医療としては19世紀以降に大きく進歩してきました。

世界で初めての全身麻酔による手術は実は日本で華岡青洲によって行われており、それは江戸時代後期にあたる1804年でした。

その後もレントゲンや人工心肺装置、医薬品の開発、様々な術式の開拓と確立が繰り返され今に至っています。

 

そして現代における医療の大きなテーマの一つに低侵襲性があり、内視鏡下手術について少し触れる必要があります。

 

内視鏡手術とは

1902年にドイツのゲオルグ・ケリング医師によって内視鏡による腹腔内の検査が初めて報告されました。

それまでは腹腔内のある検査をするためだけでも開腹して大きな傷を残していましたが、内視鏡を小さな穴から挿入することでお腹を開けずにお腹の中を見ることが可能になり低侵襲に検査できるようになりました。

そして1987年に欧米で内視鏡による腹腔鏡手術が広く行われるようになり、現在に至るまで多くの術式が内視鏡下で行われるようになってきています。

それまではお腹や胸を大きく開けて外科医が自分の目で見て手術を行なっていましたが、この術式が生まれ、術者は内視鏡がモニターに映し出す映像を通して間接的に臓器などを見ながら手術を行えるようになったのです。

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内視鏡手術(大垣市民病院HPより)

ロボット手術はこの内視鏡手術から派生した手術方法であり、第一の目的は内視鏡下手術と同様に開腹・開胸・開頭しないという点にあります。

これにより患者の身体に与える負担が少なくなり、退院が早くなって患者の社会復帰が早まるのに加えて病院の収益性が改善したりといったメリットに繋がります。

またロボットのアームは人の手には真似できないような関節の動きや、人の手に特有の手振れを無くすことができますのでそれまでは外科医の経験やセンスなどに頼られていた難易度の高い術式の裾野拡大や手術の質向上にも繋がります。

 

2点目の特徴に遠隔操作があります。

従来の手術では患者の目の前に術者がいましたが、ロボット手術の手術室では執刀医は患者と離れたコックピットに座り操作を行います。

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ロボット手術

まるでUFOキャッチャーをするプレーヤーのように手術器具をリモコン操作して手術を行う形になります。

患者の周りには助手の医師や機器を捌く看護師がいるのみになります。

執刀医は患者の近くにいる必要がないので手術室の隅に、そして今後通信環境が整っていけばその病院、その地域、その国、そしてその星にいなくても手術を行えるようになる可能性があります。

難易度が高い手術に関しては近くの医師より遠くの名医に頼むという時代が訪れるかもしれません。

 

 

今後の進化

以上のようにロボット手術は進化を続けていますがまだその過程は始まったばかりということができるでしょう。

正直いうと今ではロボットを使わない手術と比べて有用かというとまだ完全にYESとは言えないような段階と言えます。

しかしIntuitiveのda Vinciの特許が切れ始めて戦国時代に突入します。

そして人工知能ディープラーニング、AR、3Dプリンティングなどの新しい技術と結びついて飛躍的に進化していき手術のロボット化へのスピードが一気に高まるかもしれません。

さて今後ロボット手術はどのように進化していくのでしょうか。

 

日本ロボット外科学会理事長の渡邊剛先生は以下のように外科治療の未来を予見しています。

https://www.tbs.co.jp/blackpean_tbs/robot/

 

①ロボット手術は今後誰でも使うことができる当たり前の道具になる。

ビッグデータディープラーニングによってロボットが自律的に手術を行うようになる。

③50年後にはさらに機器が小型化し血管の中から手術を行うので外科がなくなっているかもしれない。

 

①は数年以内に起こりうることであり、非常に現実的であると言えます。

しかし、それだけではロボット手術の優位性というのはあまりありません。

おそらくIntuitiveやその他のテック企業が目指しているのは渡邊先生が話す②の世界でしょう。

もしくは①と②との間にある人とロボットの今まで以上のコラボレーションによるハイブリッド手術というのが現実的かもしれません。

 

ロボットが自律的に手術を行うということは命に関わることであり、未知の状況に柔軟な対応を行わなければならない複雑性を持つと言う観点で自動運転技術の進化に近いと言えます。

今まではここに進化してきたAIやディープラーニングビッグデータ、5Gなどのテクノロジーが運転や手術という行為と有機的に融合すると人間の能力を超えたパフォーマンスを得られる可能性があり、現実的なものになってきています。

実際に米国ではWaymoの完全自動運転タクシーの運用が進んでおり、最近では中国アリババが出資するAutoXの完全自動運転車のテストを始めています。

Waymoのデータによると完全自動運転による事故の頻度は「10年以上に1回」に押さえ込まれており、そのほとんどが軽微なものや相手の過失によるものだったと言います。

つまり、一般の大半の人が運転するよりも自動運転車の方が安全であると言える未来が近づいてきていると言えます。

news.yahoo.co.jp

jp.techcrunch.com

toyokeizai.net

 

感情論的には受け入れられない人が多いと思いますが、技術の進化が運転技術レベルが低い人から順に追い越していき、最終的には人が運転すること自体が危険とされて禁止されるような将来が訪れるかもしれません。

 

そしてこれと同じようなことが数十年以内というそう遠くない未来に病院や手術室でも起こるかもしれないのです。

術前から患者の体や病変が完全にスクリーニングされインプットされたロボットが胸や腹を開いていく。

洗練されたメスや糸捌きで癌細胞がみるみるうちに切除されていき、地球上のどの外科医よりも早く確実に手術を終わらせる。

感情もなく疲れも知らないロボットは1日に何件もの手術を行い、医療費の節減や病院の収支にも好影響をもたらす。

破壊的なイノベーションは医師の存在までも消し去ってしまうのでしょうか・・・?

 

まとめ

さて、今回は現在までのロボット手術の歴史や将来の姿についてざっくりとまとめてみました。

とても1度にはまとめ切れないの面白いテーマなので、ロボット手術については詳細を何回かに分けてまとめていこうと思います。

 

最後までお付き合いありがとうございました。

 

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